「ディストピアの出口」を描く12作品 Visional City Design Competition、一次審査の通過作が発表


舞台は東京23区へ 第2回コンペの応募傾向
株式会社TRIAD(本社:東京都港区、代表取締役:倉持正之)が主催する第2回建築デザインコンペティション「Visional City Design Competition(ビジョナル シティ デザイン コンペティション)」で、一次審査を通過した12作品が発表されました。今回のテーマは「ディストピアの出口 #2」です。
応募者の顔ぶれは、国内外の学生、建築設計事務所、企業、教育機関、個人クリエイターなど多岐にわたります。専門性も立場も異なる参加者たちが、それぞれの視点から都市の課題や未来の可能性に向き合う提案を寄せました。
今回は対象エリアが東京23区に拡大され、地域に着目した提案の幅も広がりました。応募対象として最も多かったのは新宿区と渋谷区で、中央区、千代田区がそれに続きます。特定の区に限らず、23区全体を対象とする提案も多く見られました。応募者の専門性や対象地域の違いはアプローチの違いとしても表れており、個別の地域が抱える課題から東京全体のあり方まで、さまざまなスケールで都市の未来を構想する案が集まっています。

審査員コメントで読む、12の通過作品
通過作品は順不同で発表されています。ここでは、各作品に寄せられた審査員のコメントから、それぞれの着眼点を紹介します。
- 「母体 2.0」:白木氏は、全応募作品を見た上で100年後の未来を描いているものはあまりなかったため、この作品を非常に面白かったと述べ、空中に建築物をつくってまで都会に住みたいのかという疑問と、都市の“負の魅力”が巧みに表現され、アート作品としても成立していると評価しました。地球温暖化や気候変動への危機感と疑問提示が最も表れており、今の延長では実現できなくても、社会が変わるきっかけとなる複合的思考として最も惹かれたとしています。
- 「街路のアジール -都市の余白を耕し、排除を癒す-」:武藤氏は、街路樹という都市空間のポテンシャルへの着目を高く評価。街路樹全体を合わせれば都市の大きな面積を占めるとし、それを仕組みとして解放し、たとえばイタリアンレストランの前でバジルを育てるようなアプローチについて、高い実現性と魅力を挙げました。谷尻氏も、実現性や事業としての成立性が見込め、環境づくりとプロジェクトが連動している全体のバランスの良い提案だと述べています。
- 「過剰消費都市の木樵」:田中氏は、既存不適格ゆえに更新できない建物の構造分析の鋭さや、街区スケールから都市スケールへの展開、「木樵(きこり)」という象徴的なキーワードで都市を捉え直すアプローチに魅力を感じたとコメント。武藤氏は、構造計算書の有無や耐震性など技術的な成立性の整理は簡単ではないとしながらも、「減築」によって建築の価値を引き上げる視点には大きな可能性があると語りました。
- 「都市に潜む神聖へ導く」:銀座などの都心部の路地裏や屋上に残る神社の参道に着目し、参道のリデザインによって神聖性を高め、老い荒れた都市の神社の格を上げるという取り組みです。武藤氏がその着眼点を評価しました。田中氏は、日本橋の福徳神社のように、もともとは注目されていなかった場所を整備したことで周辺環境や景観とマッチし、人が集まるパワースポットになった成功事例があるとし、この提案にもそれらと同様の可能性を感じると述べています。
- 「アンダーパスカテドラル」:藤本氏は、高架下の過密な開発とは対極的に、スパッと抜けたダイナミックな大空間そのものを見せるアプローチを新鮮だとし、ディストピア的風景との美的なコントラストを挙げました。千石氏は、都市の中に突如として現れる大空間の存在感が強く印象に残ったとし、全国にある高架下の利活用における新たなモデルケースとして展開する可能性に触れています。
- 「新木場【改】」:齋藤氏は、新木場がもともと貯木地であった歴史や、丹下健三氏の「東京計画1960」のような海に広がる都市計画の歴史的文脈を踏まえ、海へ拡張していく発想を面白いと評価。沼地化や水没した地域に対しても、変更順応性やフレキシビリティを持って対応できる計画になっていると指摘しました。武藤氏も、「浮かぶ都市」をつくる考え方や人間の居住領域を広げる視点には夢があると述べています。
- 「エレクトリカルパレード」:電気に縛られた都市生活の中で、電柱そのものをディストピアと捉え、道路の中央に新電柱を建てるという提案です。津川氏はその批評性の鋭さを挙げ、課題解決型を超えた全然違う次元の発想力による圧倒的なオリジナリティと、新しい議論を引き出す期待感があるとコメントしました。
- 「既存杭を都市の心臓に -既存杭を引抜き、大地と共生し、時代とともに育む渋谷川-」:谷尻氏は、都市の地下にある既存杭という問題にフォーカスし、新しい解答を出そうとする姿勢を評価。藤本氏は、解体後も地中に大量に残る杭を、ただ支えるだけでなく地熱利用など地下資源として再活用する視点を「マニアックで素晴らしい」と述べています。
- 「未完のマンション」:あえて未完成の部分を残し、可変住戸として住み手が再構築していく提案です。白木氏は「現代のマンションは完成しすぎていてつまらない」という問題意識に強く共感したとし、藤本氏は「均一で綺麗な一般流通マンションの姿こそがディストピアである」という批評的視点を鮮やかだと評しました。
- 「Mokumitsu-Merge: 建築基準法✕不動産クラウドファンディングによるボトムアップ型都市更新」:田中氏は、再建築不可な物件が生まれる制度そのものを都市のディストピアだと感じていたと述べ、具体的な解決策としてどこまで機能するかは検証が必要としつつも、非常に面白い試みだとしました。齋藤氏は、木造住宅密集地域(木密)が災害や火災への脆弱さを抱えていることに触れたうえで、2メートル以上接道していない敷地は再建築不可となり、法改正によって柱を残した改修にも確認申請が必要になったことで、資産価値を失ったまま放置せざるを得ない現状を深刻な都市課題だと指摘。権利関係の整理や法解釈といった合意形成が最大の山場になるものの、知恵とアイデアで突破すべき重要な領域だと語っています。
- 「竹匠コモンズ」:千石氏は、竹の育成から加工、建築への活用、そして土への還元に至る完全な循環プロセスを捉えている点に強く惹かれたとし、素材の新たな可能性を再発見させてくれるとコメント。白木氏も、日本的でサステナブルな素材としての竹を活用した建築的アプローチを非常に魅力的だと評価しました。
- 「ノマド団地 ー農牧とともにある都心団地群のサステナブルな更新手法 ー」:老朽化した団地の1階部分を農園や交流スペースとして再生させる提案です。谷尻氏は、将来の食糧問題を見据えて都市内部で自ら農業を行う視点に触れ、人間以外の生き物とも共生する新たな都市風景や未来像を提示した点を評価。齋藤氏は、築古団地の活用という全国的な都市課題に都市農業やコミュニティ再生を組み合わせる点を、他の通過作品とも響き合う重要なテーマだとしています。

12月17日の二次審査で各賞が決定へ
二次審査会は12月17日(木)に開かれます。一次審査通過作品の制作者がプレゼンテーションを行い、審査員による議論を経て、最優秀賞、優秀賞、特別賞が決定される予定です。
一次審査会の様子は、レポートとして公式noteで公開されています。作品全体に対する審査員の意見や、通過作品へのコメントなどを詳しく読むことができるほか、noteでは審査員特別インタビューも公開されています。
このコンペティションは、建築・アート・ビジネス・地域デザインなど、あらゆる分野の視点から都市の課題解決と新たな可能性を探ることを目的としており、社会と都市の未来をつなぐアイデアの発掘と発信を目指しています。主催の株式会社TRIADは東京都港区南青山2丁目26−1に所在し、資本金は1億円。不動産投資事業、不動産管理事業、不動産開発及びリノベーション事業、不動産資産価値向上事業(一時保有含む)、不動産特定共同事業を手がけています。
出典:株式会社TRIAD








